南條範夫「血染めの旅籠 (月影兵庫ミステリ傑作選)」 (創元推理文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は以前読んだものですが新しく傑作選が出ましたので紹介いたします。子供のころテレビドラマになって人気がありましたので、ご存じの方もあるかとは思います。近衛十四郎主演の『素浪人 月影兵庫』ですね。原作を読んだのは光文社文庫(全6巻)に収録された時でした。歴史小説の作家のイメージがある南條範夫ですがミステリー色の強い作品を多く書いていて、三頌亭もいままでいくつかを紹介してきました。剣豪小説・エンターテイメントの本作のなかのエピソードからミステリ傑作選を編集したのが今回の出版です。収録作品のなかでは少し長めの「大名の失踪」が記憶にあるでしょうか?。また長編のため今回は収録されなかった「月影兵庫 極意飛竜剣」もミステリー色の強い、大変面白い作品になっておりますのでお勧めしておきましょう。

 

 

出版社紹介

「血染めの旅籠 (月影兵庫ミステリ傑作選)」 (創元推理文庫)

「徳川11代将軍家斉の時代。時の老中・松平伊豆守信明を伯父にもつ、明朗で人懐っこい青年剣士・月影兵庫。彼は伯父の秘命を帯びた道中や、相棒の安との旅路で様々な事件に遭遇する。その度に、兵庫は鋭い洞察と上段霞切りを始めとした武芸を駆使し、解決していく。大雨で足止めを食らった人々が滞在する旅籠で、殺人が起こる「血染めの旅籠」。盗賊が豪商から盗み出した千両箱の在処を探す「偉いお奉行さま」。行方不明になっていた村で評判の美人が4年ぶりに帰還。それを機に奇怪な殺人が起きる「帰ってきた小町娘」など、傑作17編を収録する。/【収録作】「上段霞切り」/「通り魔嫌疑」/「血染めの旅籠」/「首のない死体」/「大名の失踪」/「二百両嫌疑」/「森の中の男」/「偉いお奉行さま」/「帰ってきた小町娘」/「掏摸にもすれないものがある」/「私は誰の子でしょう」/「鬼の眼に涙があった」/「乱れた家の乱れた話」/「ただ程高いものはない」/「理窟っぽい辻斬り」/「殺したのは私じゃない」/「殺しの方法は色々ある」/編者解説=末國善己

 

月影兵庫 極意飛竜剣」 (光文社時代小説文庫)

「老中松平信明の嫡子信安が惨殺された。木挽町下屋敷で兵庫を待っているところを襲われたのだ。犯人の追及に乗り出した兵庫は、片腕の男が事件の鍵を握っていることを知る。秘剣颯爽、シリーズ第二弾!(『片腕の男』改題)」

 

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「血染めの旅籠 (月影兵庫ミステリ傑作選)」

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月影兵庫 極意飛竜剣」

 

野村胡堂「奇談クラブ」(桃源社:1969、河出書房新社:2018)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日はひっそりと再版されてる本のお話です。この本もだいぶ昔に読んだ本ですが紹介しておきます。野村胡堂「奇談クラブ」です。「女性資産家を会長とする奇談クラブを舞台に、ゲストの語り手がミステリ、ファンタジーなどの奇談を語るスタイルの連作小説。」とコピーにありますw。どちらかというと「不思議なお話」に属するもので、ホラー要素は少なめですが・・・これが読ませます。河出書房新社の再版部分は戦前に書かれた以下の5話分で、それぞれが中編以上の長さを持っています。どれもよくできていて面白く、このまま連作が続くならなんと幸福なことかと「暑い下宿で読んだ」ときは思ったものですw。野村胡堂の「奇談クラブ」にはこの後書かれたエピソードもだいぶありまして、桃源社版「奇談クラブ」と作品社版「野村胡堂伝奇幻想小説集成」の収録部分を合わせてすべてとなるのですが、のちのエピソードは小ぶりな短編のイメージがありました。一番おいしいところをサクッと出したのが河出書房新社版ですね。

 

野村胡堂といえば一番有名なのが最近、創元推理文庫に傑作選の入った『銭形平次捕物控』なのですが、あちらはやや淡彩な短編の集成です。興味のある方はネットで読めますので読んでみられるのもいいでしょう。

 

野村胡堂「奇談クラブ」(河出書房新社:2018)収録作品

奇談クラブ 第一話 紅唐紙

奇談クラブ 第二話 魔の笛

奇談クラブ 第三話 湖心亭

奇談クラブ 第四話 女性の秘密

奇談クラブ 第五話 鏨地獄

 

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野村胡堂「奇談クラブ」(河出書房新社:2018)

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野村胡堂「奇談クラブ」(桃源社:1969)

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作品社版「野村胡堂伝奇幻想小説集成」

 

M W クレイヴン「ストーンサークルの殺人(The Puppet Show)」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は珍しく新刊からです。マイク・クレイヴン「ストーンサークルの殺人」ですね。この本はゆきあやさんのところで記事を拝見して面白そうなので読んでみました。派手に「Winner of the CWA Gold Dagger Award 2019」と書いていてこれはこれですごいなあと妙に感心してしまいましたw。

さて内容ですが、非常に短い章にまとめられておりまして、大変読みやすかったです。ワシントン・ポーとティリー・ブラッドショーの凸凹コンビが活躍するクライムノベルですね。全体の半分ぐらいまでは割合ゆっくりストーリーが進むのでありますが、後半に入って俄然読む速度が加速しまして一気読みでしたw。

半分くらい行ったところで勘のいいひとは犯人わかってしまうんでしょうが、後半のキモはやはり犯人の独白(じゃないですが・・)にあるのではないかと思います。犯人の境遇がかなりグロテスクかつ陰惨なことになってましてすごいです。個人的にはチャリティー・オークションというのがなんとも趣味が悪くて慄然と致しました。なので、この作品は本格ミステリーというよりもクライムノベルの面白さに近いと言っていいと思います。そのほか著者が最後の方でエドマンド・バークの『悪の勝利に必要なのは、善良なる人々がなにもしないことである』という言葉を引いているのが印象的でした。

 

というわけで勢い余って次作の「ブラックサマー」と「キュレーター」まで買い込んでしまいました。アンソニーホロヴィッツといっしょで積読本になるかもしれませんが・・・ebookはスペースを取らないのでまあいいかと自分に言い訳をしている三頌亭ですw。

 

 出版社紹介

「英国カンブリア州に点在するストーンサークルで次々と焼死体が発見された。犯人は死体を損壊しており、三番目の被害者にはなぜか停職中の国家犯罪対策庁の警官ワシントン・ポーの名前と「5」と思しき字が刻みつけられていた。身に覚えのないポーは処分を解かれ、捜査に加わることに。しかし新たに発見された死体はさらなる謎を生み、事件は思いがけない展開へ…英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールド・ダガー受賞作。」

 

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The Puppet Show01

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The Puppet Show02


 

日本SFの臨界点[怪奇篇] ちまみれ家族 (ハヤカワ文庫JA)

こんばんは、皆様、三頌亭です。最近、面白いなと思ったアンソロジーから紹介いたしましょう。「日本SFの臨界点」、怪奇篇と恋愛篇の2冊です。まずは「怪奇篇」から・・・。収録作品は下記の通り。珍しいものが多いですよ!。まずは光波耀子[みつなみようこ]「黄金珊瑚」ですね。これ読んだことがなかったのですが、なかなか面白いです。以前、出版芸術社から柴野拓美編集の「宇宙塵傑作選」が3巻本で出てましたが、あれに「聖母再現」という短編が載っていました。それしか読んだことがなかった作家です。中島らも「DECO-CHIN」なんかも面白いんですが、集中のイチオシ作品は石黒達昌「雪女」です。民間伝承とSFホラーを組み合わせた巧みな作品です。

 

余談ですが伴名練さんの解説がすごいですw。パワーに任せて読みまくりというか、感動してしまいますww。併設で伴名練「少女禁区」 (角川ホラー文庫)もよろしく。しかし「恋愛篇」の方には中井紀夫和田毅(草上仁)まではいっていて驚いています・・・・今誰がよみますか?ww。

 

日本SFの臨界点[怪奇篇]:収録作品

中島らも「DECO-CHIN」

(『蒐集家 異形コレクション』/光文社文庫/ 2004 年刊)

山本弘「怪奇フラクタル男」

(〈小説CLUB〉1996 年10月号/ 1996 年刊)

田中哲弥「大阪ヌル計画」

(『ホシ計画』/廣済堂文庫/ 1999 年刊)

・岡崎弘明「ぎゅうぎゅう」

(『SFバカ本 たいやき編』/ジャストシステム/ 1997 年刊)

中田永一乙一)「地球に磔にされた男」

(〈yomyom〉vol.40 /新潮社/ 2016 年刊)

・光波耀子「黄金珊瑚」

(〈宇宙塵 第46号〉/同人誌/ 1961 年刊)

津原泰水「ちまみれ家族」

(『血の12幻想』/講談社文庫/ 2002 年刊)

中原涼「笑う宇宙」

(〈奇想天外〉1980 年9月号/奇想天外社/ 1980 年刊)

森岡浩之「A Boy Meets A Girl」

(『宇宙への帰還』/ケイエスエス/ 1999 年刊)

谷口裕貴「貂の女伯爵、万年城を攻略す」

(『進化論 異形コレクション』/光文社/ 2006 年)

石黒達昌「雪女」

(『人喰い病』/ハルキ文庫/ 2000 年刊)

 

出版社紹介

「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」と称された伴名練が、全身全霊で贈る傑作アンソロジー。日常的に血まみれになってしまう奇妙な家族のドタバタを描いた津原泰水の表題作、中島らもの怪物的なロックノベル「DECO‐CHIN」、幻の第一世代SF作家・光波耀子の「黄金珊瑚」など、幻想・怪奇テーマの隠れた名作11本を精選。全作解題のほか、日本SF短篇史60年を現代の読者へと再接続する渾身の編者解説1万字超を併録。

 

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日本SFの臨界点[怪奇篇]

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日本SFの臨界点[怪奇篇] &[恋愛篇]

 

機動戦士ガンダム 第08MS小隊

こんばんは、皆様、三頌亭です。特にというわけではないのですが「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」を見てみました。実は「マクロス」のBlu-rayのCMをみていたらマスタリングされてやたらカッコよくなっていたのでこちらも見てみたのですが・・・。こちらのほうは残念ながらあんまり変わってないですw。原作は「富野」さんらしいです。私的にはこのシリーズ、「中二病・コンバット」と呼んでおりますww。バンダイOVAのせいもあるのでしょうが力の抜け具合がよろしいので大好きなシリーズなのです。ガンダムの絵の方は非常によろしいんですよ、コレ。いまだにLDのジャケット思い出す三頌亭ですw。

 

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機動戦士ガンダム 第08MS小隊01

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機動戦士ガンダム 第08MS小隊02

 

横田順彌「幻綺行 完全版」 (竹書房文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は「ヨコジュン」の「幻綺行 完全版」です。「SFアドベンチャー」掲載時の短編エピソードをすべて収集した版です。SF冒険小説とでも言ったらいいのでしょうか?。実在の人物・中村春吉をモデルにした秘境探検小説、小栗虫太郎の「人外魔境」や香山滋の人見十吉ものなんかをイメージしてもらえればいいです。おきまりの冒険小説なのですがモデルにした中村春吉のせいなのでしょうカラっと楽しく仕上がっていい作品になってます。ヒロイン役の「雨宮志保」が頭よすぎなのはご愛嬌ですw。

さて横田順彌氏の作品で中村春吉が活躍する長編作品は以下2点です。こちらもできれば再版してほしいものです。

『大聖神 中村春吉秘境探検記』(徳間書店、1994年)

日露戦争秘話 西郷隆盛を救出せよ』(光栄、1995年)

参考:実在の中村春吉に関して

中村春吉自転車世界無銭旅行 (押川春浪 編)

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/887000/1

 

ところで解説の日下三蔵氏が言っているようにNHKの『いだてん〜東京オリムピック噺〜』での天狗倶楽部のエピソードを見られずに亡くなってしまったのは残念だっただろうと思います。また日下氏の「それでも著作は残りますよ」という1行に感動してしまいました。遅くなりましたがご冥福をお祈りいたします。願わくば「日本SFこてん古典」の再版されんことを・・やはり横田順彌作品中の白眉ですから。

 

出版社紹介

「その男がゆくところ、必ずや冒険と怪奇が待ち受ける。男の名は中村春吉。明治の世に自転車で世界一周無銭旅行を決行した快男児である。困っている人間を見捨てておけぬ性分ゆえによく事件に巻き込まれる。そんなバンカラの権化のような男が、蘇門答剌(スマトラ)で面妖な植物と遭遇したのを皮切りに、波斯(ペルシヤ)では怪魔像と対決し、露西亜(ロシア)では突如現れては消えるバラバラ死体の謎に挑む。中村春吉が求めるのは秘宝にあらず名誉にあらず。ただひたすらに未知なるものを求めて探検と旅を続けるのみ。明治の世界を舞台に冒険譚とSFを見事に融合させた傑作が、単行本未収録の二篇を加えた完全版として令和の世に甦る!」

参考)横田順彌「快絶壮遊〔天狗倶楽部〕: 明治バンカラ交遊録 (ハヤカワ文庫JA)」

 

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横田順彌「幻綺行 完全版」 (竹書房文庫)

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幻綺行 中村春吉秘境探検記

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SFマガジン横田順彌・追悼号

 

戸川昌子「くらげ色の蜜月」(竹書房文庫)「緋の堕胎--ミステリ短篇傑作選」(ちくま文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は最近復刻された戸川昌子作品集の2冊です。以前のブログでだいぶ紹介してしまいましたので、「最近こんなのが出てるよ」ぐらいのところでお願いいたします。表紙の派手さとは違って「緋の堕胎--ミステリ短篇傑作選」(ちくま文庫)のほうがインパクトが強いものが多いでしょう・・・たぶん。クイーン激賞のアンソロジーピース「黄色い吸血鬼」をはじめとして非常に個性的な作品がそろってます。表題作「緋の堕胎」・・・グロいですww。それに比べて「くらげ色の蜜月」(竹書房文庫)は少し戸川作品を読んだことがある人向きでしょうか?。比較的珍しい作品が集められています。個人的には「隕石の焰」「くらげ色の蜜月」「蟻の塔」「悪魔のような女」あたりが記憶にあるでしょうか?。余談ですが双葉文庫の3流週刊誌のような表紙が懐かしいです。

 

「くらげ色の蜜月」収録作品

隕石の焰

鷗が呼ぶ

くらげ色の蜜月

エスカルゴの味

蟻の塔

ウルフなんか怖くない

悪魔のような女

聖女

蟻の声

赤い的

蜘蛛の糸

奇妙な快楽

蠟人形レストラン

情事の絵本

 

出版社紹介

『倫理もなく、理屈もない。奇妙な出来事が、ただそこにある――。初々しい新婚夫婦。しかしふたりは、たがいに秘密を抱えていた。そして男はなぜ新婚旅行先に忌まわしい思い出が残る旅館を選んだのか。旧い結婚観が招いた悲哀劇(表題作)。新発見の感染症の手がかりを追う保健所の職員は歪んだ虹色の世界を覗き見る(「蟻の塔」)。アメリカで妊娠した修道女は、日本で病床にある教主とのあいだにできた御子だと主張するが……。果たして、彼女が語るのは奇蹟か幻想か(「聖女」)。女の生涯には、常に蟻が這い回っていた(「蟻の声」)。

光に眩み、闇に溺れる。罪を犯して贖いて、果てに待つのはおぞましくも美しき混沌の世界。地獄極楽板一枚。ただひたすらに、酔え、惑え。文庫初収録三篇を含む、江戸川乱歩賞作家円熟期の短篇集。』

 

 

「緋の堕胎--ミステリ短篇傑作選」収録作品

『緋の堕胎』

『嗤う衝立』

『黄色い吸血鬼』

『降霊のとき』

『誘惑者』

『塩の羊』

『人魚姦図』

『蜘蛛の巣の中で』

『ブラック・ハネムーン』

 

出版社紹介

「他の病院で断られたわけありの患者も引き受ける堕胎専門医、新興宗教にはまる妻、元患者の愛人、胎児の処理をさせられる書生……歪な病院で起きた患者の失踪の?末(表題作)。新婚旅行初夜の新婦を襲う救いようのない悲劇(「ブラック・ハネムーン」)。めくるめく官能と幻想、常人の倫理を超えていく不条理と奇想によって独自の世界観を作り出す官能ミステリの女王の傑作をこの一冊に凝縮。」

 

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「くらげ色の蜜月」(竹書房文庫)

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「緋の堕胎--ミステリ短篇傑作選」(ちくま文庫)