スティーヴン・ジョーンズ編『インスマス年代記』(2001:学研M文庫)

こんばんは皆様、三頌亭です。お久しぶりですw。最近どうも読書欲がのらなくて・・・新しいもの読んでないんですね。というのでブックオフで買ってきたものです。千篇一律、相も変わらないストーリーのクトゥルー神話ものです。収録作品は下記のとおりです。上巻のベイザル・カパー「暗礁の彼方に」と変わった切り口のデイヴィッド・サットン「インスマスの遺産」が面白いです。読書欲がのらない時はこれが一番wwかどうかは知りませんが興味のおありかたはいかがでしょうか?。最近になってよく思うのはクトゥルー神話ってライター参加型のゲームじゃないかと・・?。設定にひどく制約があって、例えばミステリーとかも同じですが、この範囲内で面白く書いてね・・といった一種のゲームですね。そういう意味ではラヴクラフト&ダレスって思いもよらない先進性があったのではないかと愚考する次第でありますww。

 

 

インスマス年代記』 Shadows Over Innsmouth (1994) スティーヴン・ジョーンズ編集 翻訳:大瀧啓裕(Ōtaki Keisuke) 学研M文庫

 

上巻

「序文 -深きものどもの落とし子」 Introduction スティーヴァン・ジョーンズ(Stephen Jones)

インスマスを覆う影」 The Shadow Over Innsmouth H・P・ラヴクラフト(H. P. Lovecraft)

「暗礁の彼方に」 Beyond the Reef ベイザル・カパー(Basil Copper)

「大物」 The Big Fish ジャック・ヨウヴィル(Jack Yeovil)

インスマスに帰る」 Return to Innsmouth ガイ・N・スミス(Guy N. Smith)

「横断」 The Crossing エイドリアン・コール(Adrian Cole)

「長靴」 Down to the Boots D・F・ルーイス(D. F. Lewis)

「ハイ・ストリートの教会」 The House in High Street ラムジイ・キャンブル(Ramsey Campbell)

インスマスの黄金」 Innsmouth Gold デイヴィッド・サットン(David Sutton)

下巻

「ダオイネ・ドムハイン」 Daoine Domhain ピーター・トレマイン(Peter Tremayne)

「三時十五分前」 A Quarter to Three キム・ニューマン(Kim Newman)

「プリスクスの墓」 The Tomb of Priscus ブライアン・ムーニイ(Brian Mooney)

インスマスの遺産」 The Innsmouth Heritage ブライアン・ステイブルフォード(Brian Stableford)

「帰郷」 The Homecoming ニコラス・ロイル(Nicholas Royle)

「ディープネット」 Deepnet デイヴィッド・ラングフォード(David Langford)

「海を見る」 To See the Sea マイカル・マーシャル・スミス(Michael Marshall Smith)

ダゴンの鐘」 Dagon's Bell ブライアン・ラムリイ(Brian Lumley)

「世界の終わり」 Only the End of World Again ニール・ゲイマン(Neil Gaiman)

 

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インスマス年代記

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Shadows Over Innsmouth (1994)

 

ノーマン・マクレイ「フォン・ノイマンの生涯」 (ちくま学芸文庫:2021)

こんばんは皆様、三頌亭です。今日は以前、朝日選書で出ていたものがちくま学芸文庫に入ったのでご紹介いたしましょう。ノーマン・マクレイの「フォン・ノイマンの生涯」です。フォン・ノイマンの伝記の決定版といっていいのじゃないかと思ってます。この伝記を読むまでフォン・ノイマンについて知らなかったことがたくさんあります。その中で1点だけ挙げておきましょう。フォン・ノイマンは戦後、アメリカの水爆開発を率いたスーパー・タカ派の人物だったのですが、なぜそうなったかというのがそれまで読んだ本ではよくわからなかったです。東西冷戦を演出した科学者の頭の中にあったのは「ゲーム理論囚人のジレンマ)」だったのかというのが発見でした。これを核戦争を未然に防いだ「負のファインプレー」とみるかどうかは永久に答えの出ない問題だとは思いますが・・・。大変面白かったノンフィクションなのでフォン・ノイマンに興味のある方には推薦しておきましょう。

 

出版社紹介

『その底知れない知力によって悪魔とも宇宙人とも呼ばれた男―量子論、ゲームの理論、原水爆、コンピュータ、数値気象学…を立ち上げ、20世紀後半の科学と社会を基礎づけたハンガリー出身ユダヤ人科学者の足跡。

 

目次

頭で世界を変えた男

ブダペストのお坊っちゃま

ギムナジウム時代

獅子の爪をもつ学生

心のゆとりと数学者たち

ゲッチンゲンの量子力学

疾風怒濤の時代、結婚、渡米

プリンストンの憂鬱

爆発計算プロフェッショナル

ロスアラモス、トリニティ、広島、長崎〔ほか〕』

 

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ノーマン・マクレイ「フォン・ノイマンの生涯」

 

『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』(ハヤカワ文庫:2021)

こんばんは、皆様、三頌亭です。引き続き伴名練さん編集の石黒達昌傑作選でございます。えー、発表年代を見ると・・・結構古いじゃないですかww。完全にノーマークの作家さんです。で他の作品集と掲載紙などを見てました。これはしかたがありませんね。この方、現役のお医者さんで医学の研究者です。まるで医学論文の数珠繋ぎみたいな体裁なのですが、これが全体としてSFもしくはファンタジーになっていて面白いんです。うーん、こういう言い方怒られるかもしれませんが・・・、地味な「マイケル・クライトン」といった作風をイメージしてもらえればいいでしょうか?。この傑作選には収録されてませんが『人喰い病』(ハルキ文庫)というのがあって、「アンドロメダストレイン」みたいだと面白そうだな・・と考えてます。またいつか読んでみたいと思います。

 

 

冬至草/雪女』収録作品・解説

「希望ホヤ」(SFマガジン2002年3月号、早川書房

冬至草」(文學界2002年5月号、文藝春秋

「王様はどのようにして不幸になっていったのか?」(〈小説トリッパー〉1996年夏季号、朝日新聞出版)

「アブサルティに関する評伝」(すばる2001年11月号、集英社

「或る一日」(文學界1999年3月号、文藝春秋

「ALICE」(〈海燕〉1995年6月号、福武書店

「雪女」(『人喰い病』2000年、角川春樹事務所)

「平成3年5月2日,後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士,並びに,」(海燕1993年8月号、福武書店

 

「1926年の北海道、ある医師の診療所に運ばれてきた女は特異な症状を示していた……圧巻の幻想SF「雪女」、人の血液を養分とする異様な植物をめぐって科学という営為の光と影を描いた「冬至草」のほか、論文捏造事件を予見した「アブサルティに関する評伝」、架空生物ハネネズミを横書き論文形式で語り大江健三郎筒井康隆に絶賛された芥川賞候補作など、伝説的作家による全8篇を集成! 伴名練渾身の解説40p超を併録。」

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日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女

 

『日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽』(ハヤカワ文庫:2021)

こんばんは、皆様、三頌亭です。このまえ読んだ「日本SFの臨界点[怪奇篇]」で「中井紀夫なんか今読む人いるんだろうか?」とか言ってたら出てきた短編集ですw。伴名練さんによる中井紀夫傑作選です。収録作品の発表年代を見ていただけるとよくわかりますが、私の中では「バブル」のころの作家というイメージが強いです。中井紀夫の作品はSF作品といえばそうなのですが、どちらかというと「不思議なお話」というか幻想譚に近いものといったほうがいいかもしれないです。収録作品の中ではなんといっても表題作の「山の上の交響楽」が面白いのですが、個人的に記憶に残ってる短い作品で「山手線のあやとり娘」が素晴らしいです。「あやとり」を言葉の代わりにするという発想が本当に面白くて初めて読んだときは大変感心いたしました。変わった作家ですが、ある種の爽快感を感じる作品群にこの作家の素晴らしい資質を感じますね。皆様はいかがでしょうか?

 

 

【収録作】

「山の上の交響楽」(SFマガジン1987年10月号、早川書房

「山手線のあやとり娘」(SFアドベンチャー1988年1月号、徳間書店

「暴走バス」(SFアドベンチャー1988年2月号、徳間書店

「殴り合い」(SFアドベンチャー1991年12月号、徳間書店

「神々の将棋盤」(SFマガジン1994年3月号、早川書房

「絶壁」(SFマガジン1995年11月増刊号、早川書房

「満員電車」(SFアドベンチャー1988年11月号、徳間書店

「見果てぬ風」(SFマガジン1987年3月号、早川書房

「例の席」(SFの本第9号、1986年、新時代社)

「花のなかであたしを殺して」(SFマガジン1990年4月号、早川書房

「死んだ恋人からの手紙」(SFマガジン1989年6月号、早川書房

 

著者あとがき 

解説 奇想と抒情の奏者──中井紀夫の軌跡/伴名練

 

『日本SFの臨界点[恋愛篇・怪奇篇]』に続き、SF作家・伴名練が今この時代、最も読んでほしい作家の傑作群を全力で編纂する新シリーズ。第1弾は奇想文学の名手、中井紀夫。山頂の楽堂でたったひとつの交響楽を数百年にわたり演奏し続ける楽団を描いて、星雲賞を受賞した表題作のほか、不思議な少女とのささやかな出逢いを描く「山手線のあやとり娘」、書籍初収録作の「花のなかであたしを殺して」など全11篇。デビューからの全軌跡を辿る超充実の巻末解説を併録!

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日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽

 

早坂吝「四元館の殺人 探偵AIのリアル・ディープラーニング」(新潮文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。これも最近買って読んだ本です。早坂さんの「四元館の殺人 探偵AIのリアル・ディープラーニング」です。なんだかんだといやに人間臭い人工知能の相以(あい)ちゃんの活躍するミステリー作品です。体裁は館もので、古典的なスキームを踏襲しており、最後の方はほとんど「八つ墓村」でございますww。キモのラストのトリックはもはや何でもありの状態で、ある意味感心いたします。

個人的にはもう少しイラストを入れていただくとイメージしやすいんですが・・いろいろ・・・といったところです。(どうでもいいんですがクリアしおりがツボでしたww)

 

誘電エラストマーのイメージ。「人工筋肉」などへの応用が考えられています。

The Basics of Dielectric Elastomers

https://www.youtube.com/watch?v=PDqmGHHKkWw

 

出版社紹介

「今度の舞台は雪山の館。驚天動地の犯人、爆誕⁉「犯罪オークションへようこそ! 」 犯人のAI・以相(いあ)が電脳空間で開催した闇オークション、落札したのは、従姉を何者かに殺され、復讐のための殺人を叶えたいというひとりの少女だった!?以相による殺意の連鎖を食い止めるべく、探偵のAI・相以(あい)と助手の輔(たすく)がわずかな手がかりを元に辿り着いたのは――雪山に佇む奇怪な館「四元館(よんげんかん)」だった。そこに住まう奇妙な四元(よつもと)一族と、次々巻き起こる不可思議な変死事件……人工知能の推理が解き明かす前代未聞の「犯人」とは!? 本格ミステリの奇才が“館ミステリ"の新たなる地平を鮮烈に切り開く、傑作長編。」

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早坂吝「四元館の殺人 探偵AIのリアル・ディープラーニング

 

荒俣宏 編/紀田順一郎 監修「平井呈一 生涯とその作品」(2021:松籟社)

こんばんは、皆様、三頌亭です。最近、買って読んだ本です。荒俣宏 編/紀田順一郎 監修の「平井呈一 生涯とその作品」です。創元推理文庫の「幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成)」のあとがきを読んでいて荒俣宏氏が平井呈一に関する詳細な年譜を用意していることを知った時から楽しみにしていた本で、荒俣宏氏の労作です。未発表作品・随筆ともに珍しいものが収められていて大変おもしろかったです。そして、これは内容とは直接関係がないのかもしれませんが、知遇を得た最後のお二人(荒俣宏紀田順一郎)の熱意が三頌亭には少しだけ寂しいものに感じられて胸がいっぱいになってしまいました。

 

松籟社・内容紹介

  ラフカディオ・ハーンの諸作品の、また『ドラキュラ』はじめ英米怪奇文学の翻訳者として著名な平井呈一(本名・程一)。しかしその生涯は不明なところが多く、モデル小説とされる『来訪者』(永井荷風)に基づく偏見も一部に見られる。

  中学時代に平井呈一の知遇を得、師事した編者・荒俣宏が、広範な資料調査と関係者への綿密な取材をもとに平井程一年譜を作成(荒俣と同じく、平井に縁の深い紀田順一郎が監修にあたった)。加えて未発表の小説3作、評論や随筆、俳句作品、呈一縁者の回想記等を併載し、平井呈一という一人の文学者の全体像を明らかにする。

 

【本書の主要目次】

 

平井呈一  生涯とその作品』に寄せて  (紀田順一郎

 

第一部  平井程一年譜

 

第二部  未発表作品・随筆・資料他

 

一.未発表作品

  鍵

  顔のない男

  奇妙な墜死

 

二.評論・随筆・解説他

  私小説流行の一考察─併せて私小説に望む

  文壇人を訪ねる【二十三】 近松秋江氏とストーヴ

  サッカレエ『歌姫物語』解説

  翻訳三昧

  小泉八雲─NHK「人生読本」より

  「世界恐怖小説全集」内容紹介より

  「全訳小泉八雲作品集」(恒文社刊)内容紹介より

  東都書房「世界推理小説大系」月報より

  講談社「世界推理小説大系」月報より

  「無花果会」以前の程一俳句

 

三.呈一縁者による回想記

  他郷に住みて  (吉田文女)

  雲の往来  (谷口喜作)

 

平井呈一作品解題  (荒俣宏

 

あとがきと感謝の辞  (荒俣宏

 

編者・監修者紹介

荒俣宏(あらまた・ひろし)  ※編者

作家・翻訳家・博物学者。京都国際マンガミュージアム館長。

平井呈一に師事、平井から紹介された紀田順一郎とともに、怪奇幻想文学の日本での翻訳紹介に尽力。のち活動の幅を広げ、博物学をはじめとして多ジャンルにわたって活躍。

主な著書に『妖怪少年の日々』、『帝都物語』シリーズ(ともにKADOKAWA)、『世界大博物図鑑』(平凡社)、『サイエンス異人伝』(講談社)、『江戸の幽明』(朝日新書)など。『怪奇文学大山脈』Ⅰ~Ⅲ(東京創元社)を編纂。

 

紀田順一郎(きだ・じゅんいちろう)  ※監修者

評論家・作家。書誌学、メディア論を専門とし、評論活動を行うほか、創作も手がける。

主な著書に『紀田順一郎著作集』全八巻(三一書房)、『日記の虚実』(筑摩書房)、『古本屋探偵の事件簿』(創元推理文庫)、『蔵書一代』(松籟社)など。荒俣宏と雑誌「幻想と怪奇」(三崎書房/歳月社)を創刊、のち叢書「世界幻想文学大系」(国書刊行会)を共同編纂した。

 

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平井呈一 生涯とその作品01

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平井呈一 生涯とその作品02

 

小栗虫太郎「亜細亜の旗」(2021:春陽堂書店)

こんばんは、皆様、三頌亭です。最近、仕入れて読んだ作品です。今頃になって小栗虫太郎の長編作品が発掘されてこようとは夢にも思わなかったですね。さらに驚くべきはその文体でありましょうか?。恐ろしく平易かつ読みやすい文章でありまして、およそ同じ著者によって書かれたとは思えない作品です。この後発表されたジュブナイルSF「成層圏魔城」ですら、それまでの小栗虫太郎作品と違和感があったわけではありません。もし同一の著者によって書かれたものとすれば大変苦労して書かれたものだと三頌亭は思っております。とりあえず彼のファンの方のみにお勧めしておきます。

 

参考資料

江波戸泰子『おじいちゃん、一二〇歳おめでとう』

http://www.mystery.or.jp/magazine/article/746

 

出版社紹介

小栗虫太郎生誕120年、歿後75年記念出版

大東亜共栄圏構想を掲げていた昭和16年、太平洋戦争前夜の厳しい言論統制下で 連載されていた小栗虫太郎の長編小説発見! 80年の時を経て初刊行! !

小栗虫太郎は、横溝正史江戸川乱歩の登場した雑誌『新青年』でデビュー。『黒死館殺人事件』によって当時の探偵文壇に確固たる地位を築き、現在も『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』と並ぶ三大奇書と称されている。その小栗の見慣れない連載小説が発見され、専門家の調査により“未刊行作品"と確認された。独自の文体、ペダントリー、ミステリー趣向は影をひそめ、従来の小栗虫太郎観を激変せしめる通俗的な恋愛小説である。歿後74年にして出版される異色作だが、本書の刊行は、戦時下の探偵作家たちの苦労とともに、昭和における国家と政治、文学を問い返す機会にもなるだろう。

 

亜細亜の旗』ストーリー

日中の架け橋たらんと上海の病院に勤務する青年医師・峰島譲治は、一時帰国の船上で運命の女性・暁子と出逢う。だが二人の恋は、周辺の思惑が複雑に絡み合って定まらない。大東亜共栄圏建設によって雄飛しようとする日本の姿を、主人公に仮託した小栗虫太郎の国策小説発見! 『黒死館殺人事件』をしのぐ一大長篇、ここに登場! ! 発見者の山口直孝氏(二松学舎大学)の解説のほか、子息・小栗宣治氏の「小伝・小栗虫太郎」を収録。」

 

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小栗虫太郎亜細亜の旗」01

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小栗虫太郎亜細亜の旗」02