『日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽』(ハヤカワ文庫:2021)

こんばんは、皆様、三頌亭です。このまえ読んだ「日本SFの臨界点[怪奇篇]」で「中井紀夫なんか今読む人いるんだろうか?」とか言ってたら出てきた短編集ですw。伴名練さんによる中井紀夫傑作選です。収録作品の発表年代を見ていただけるとよくわかりますが、私の中では「バブル」のころの作家というイメージが強いです。中井紀夫の作品はSF作品といえばそうなのですが、どちらかというと「不思議なお話」というか幻想譚に近いものといったほうがいいかもしれないです。収録作品の中ではなんといっても表題作の「山の上の交響楽」が面白いのですが、個人的に記憶に残ってる短い作品で「山手線のあやとり娘」が素晴らしいです。「あやとり」を言葉の代わりにするという発想が本当に面白くて初めて読んだときは大変感心いたしました。変わった作家ですが、ある種の爽快感を感じる作品群にこの作家の素晴らしい資質を感じますね。皆様はいかがでしょうか?

 

 

【収録作】

「山の上の交響楽」(SFマガジン1987年10月号、早川書房

「山手線のあやとり娘」(SFアドベンチャー1988年1月号、徳間書店

「暴走バス」(SFアドベンチャー1988年2月号、徳間書店

「殴り合い」(SFアドベンチャー1991年12月号、徳間書店

「神々の将棋盤」(SFマガジン1994年3月号、早川書房

「絶壁」(SFマガジン1995年11月増刊号、早川書房

「満員電車」(SFアドベンチャー1988年11月号、徳間書店

「見果てぬ風」(SFマガジン1987年3月号、早川書房

「例の席」(SFの本第9号、1986年、新時代社)

「花のなかであたしを殺して」(SFマガジン1990年4月号、早川書房

「死んだ恋人からの手紙」(SFマガジン1989年6月号、早川書房

 

著者あとがき 

解説 奇想と抒情の奏者──中井紀夫の軌跡/伴名練

 

『日本SFの臨界点[恋愛篇・怪奇篇]』に続き、SF作家・伴名練が今この時代、最も読んでほしい作家の傑作群を全力で編纂する新シリーズ。第1弾は奇想文学の名手、中井紀夫。山頂の楽堂でたったひとつの交響楽を数百年にわたり演奏し続ける楽団を描いて、星雲賞を受賞した表題作のほか、不思議な少女とのささやかな出逢いを描く「山手線のあやとり娘」、書籍初収録作の「花のなかであたしを殺して」など全11篇。デビューからの全軌跡を辿る超充実の巻末解説を併録!

f:id:kms130:20210917231558j:plain

日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽