ウィリアム パウンドストーン「天才数学者はこう賭ける:誰も語らなかった株とギャンブルの話」(青土社:2006)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は「天才数学者はこう賭ける」であります。たまにはこちらのフォルダも更新しようと思いまして・・・。この本ですが内容はというと、金融工学の現代における発展と山っ気の多い数学者群像といったところです。昔から数学者と賭博というのはよくある取り合わせで、かのパスカルとフェルマーが賭けの問題を論議しあったことから、確率論は始まっております。また相場(株価など)の変動のモデリングとその必勝法は数々の数学者の挑戦を退けてきた難敵でありました。この本ではまずケリー基準(破産確率)を先取りしたダニエル・ベルヌーイから始めますが、有名な次の例をあげておきましょう。

 

Google Aiより

『天才科学者アイザック・ニュートンは、1720年にイギリスで起きた世界規模のバブル崩壊「南海泡沫事件(サウス・シー・バブル)」に巻き込まれ、現在の価値で約4億円(当時の2万ポンド)にのぼる大損をしました。物理や数学で人類最高峰の頭脳を持っていたニュートンが、なぜ相場で破滅的な大失敗をしてしまったのか、その経緯と理由は以下の通りです。

ニュートンが大損したプロセス

ニュートンの投資行動は、現代の個人投資家が陥る「典型的な失敗パターン」そのものでした。

  1. 1ウェーブ(成功): ニュートンは早い段階から「南海会社」の株を購入しており、株価が暴騰する途中で一度売却し、大きな利益(勝ち逃げ)を得ました。

 

  1. 心理的焦り(嫉妬と狂気): 売却後も株価はさらに上昇を続けました。周囲の凡人たちが株で大儲けして成金になっていく姿を見て、ニュートンは「早く売りすぎて損をした」という強い後悔と焦りに襲われます。

   

  1. 高値でのイナゴ買い(再エントリー): 誘惑に耐えきれなくなったニュートンは、バブルの最高値圏(最初の購入時の数倍の価格)で、安全資産や全財産を投げ打って再び南海株を大量に買い戻してしまいます

   

  1. ナンピン買いと破滅: その後バブルが崩壊し、株価はリンゴが落ちるようなスピードで急落しました。ニュートンは現実を受け入れられず、株価が下がる途中でさらに「買い増し(ナンピン)」を行い、傷口を致命的なまでに広げました。

 

ニュートンが残した名言

この大損に絶望したニュートンは、後に次のような有名な言葉を残しています。 

「私は天体の動きならいくらでも計算できるが、人々の狂気までは計算できなかった。」

 

どれほど数式や論理に強い天才であっても、集団心理が作り出す相場の過熱感(バブル)や、自分自身の「欲・焦り」といった感情をコントロールすることは不可能だったという教訓として、今なお世界中のトレーダーに語り継がれています。

その後、ニュートンは周囲の前で「南海(サウス・シー)」という言葉を出すことすら極端に嫌がったとされています。』

 

いかがでしょうw。かの天才もとった行動は現代の一般の投資家たちと全く変わりませんね。実際に経験のある方もいらっしゃるじゃないかと思います。ただGoogle Aiさんとことなり三頌亭は「人々の狂気までは計算できなかった。」というニュートンに底知れない天才を感じてしまいました。何故かというと核心の作業仮説に1発で届いてしまっているからです。

 

この本は戦後のアメリカで相場変動に挑んだ数学者の銘銘伝です。登場人物のなかで最も興味深いのはクロード・シャノンでしょう。「情報工学」の創始者、イケメンのおっちゃんでMITの偉人ですw。彼の生涯・リターンは28%だったそうです(思ったより少ないでしょうw)。ブラックジャックの必勝法を開発したエドワード・ソープ、この人も非常に印象的人ですね。さらに時は現代、金融工学という名の新しい武装に身を包んだ2人のノーベル賞受賞者を擁するヘッジファンドがこの難敵に挑みますがあえなく破綻してしまいました。死闘はまだまだ続いているようです。

 

蛇足:もう少し数式入れてくれた方がわかりやすいと思います(^^;)。

 

「天才数学者はこう賭ける」Google Aiによる解説

「『天才数学者はこう賭ける:誰も語らなかった株とギャンブルの話』(原題: Fortune's Formula)は、ウィリアム・パウンドストーン著、青土社から出版された確率論、資金管理、そして金融工学の歴史を描いたノンフィクション書籍です。

主要な登場人物とエピソード

  1. クロード・シャノン:情報理論の創始者。ケリー基準のベースとなるエントロピー概念を提唱し、自らも株式投資で巨富を築きました。
  2. エドワード・ソープMITの数学者。ケリー基準を応用してブラックジャックのカードカウンティング(必勝法)を開発し、カジノを震撼させました。その後、ヘッジファンドを設立してウォール街でも大成功を収めます。
  3. サミュエルソンと経済学者たち:ケリー基準(一発退場を避けつつ幾何平均リターンを最大化するアプローチ)を「リスクが高すぎる」として批判した、ノーベル経済学賞受賞者ポール・サミュエルソンら伝統的経済学者との激しい論争が描かれます。

本書がもたらす最大の教訓

どれほど予測の精度(確率)が高くても、「賭け方(資金管理)」を誤れば確実に破滅するということです。
投資やトレーディングにおいて、手法(勝率)と同じくらい、またはそれ以上に1回あたりに投じる資金の割合が重要であることを、歴史的なドラマとともに学べる名著として今なお高く評価されています。」

 

クロード・シャノン01

クロード・シャノン02

エドワード・ソープ01

エドワード・ソープ02

『天才数学者はこう賭ける:誰も語らなかった株とギャンブルの話』

 

アニメ『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日はお盆休みに見たアニメ『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』です。このアニメ、表題の示す通り、原案・手塚治虫『リボンの騎士』であります。さて、原作アニメやマンガ見たり読んだりした方はすこし横へどけておいてくださいw。このアニメではリボンによって変身するヒーローものという設定になっておりまして、さらに左手は「ナウシカ」のクシャナ並みに義手となっております。

 

THE RIBBON HERO リボンヒーロー』アニメMV公開

https://www.youtube.com/watch?v=XtFojj-KBgw&list=RDXtFojj-KBgw&start_radio=1

超作画! サファイアがリボンの騎士に変身

https://www.youtube.com/watch?v=3O61UwN_Xds

 

五十嵐祐貴監督はアニメーター出身なせいもあるでしょうが、絵はなかなかよくって、アニメーションの疾走感も抜群ですね。まあ配色が最近風なのが少し気にいらないんですが。まあ良しとしましょうw。ただ、設定やシナリオには過去作品のオマージュだとは思うんですが・・・それらを想起させる部分が大量に含まれております。例えば、世界観は「ナウシカ」なんかに大きく依っているように見えます。意地悪く言うと借りものだらけで、オリジナルなのはリボンで変身するところぐらいとなってしまいます(変身のBGMが「鉄人28号」みたいでしたw)。逆にほとんどをオリジナルでやってみせたパヤオ大先生はやっぱり偉大だと妙に感心してしまいましたww。

 

とはいえ、現代の「とりかえばや物語」、下手をするとポリコレだらけのとんでもない代物にならなかったのは、制約の多い中、無難に全体をまとめた五十嵐祐貴監督の手腕の賜物といえましょう。原作の漫画やアニメを知らない方は気楽に楽しんでもらっていい作品だと思います。

 

『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』01

『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』02

『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』03

 

ジョージ・マクドナルド「ファンタステス」(ちくま文庫:1999)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は以前読んだものです。ジョージ・マクドナルド晩年の作品「ファンタステス」です。副題に「成年男女のための妖精物語」とありまして、いわゆる「アダルト・ファンタジー」といわれるれるものですね。ジョージ・マクドナルドは英国ファンタジー文学の優れた先覚者で、この作品の序文を「ナルニア国物語」のC・S・ルイスがかいていることからもそれがうかがえることでしょう。ミステリファンの人にはフィリップ・マクドナルド(「Xに対する逮捕状」など)のおじいさんといったほうが通りがいいかもしれません。

 

さて、はるか昔、英語の学習用に読んだ『北風のうしろの国』(研究社??)が記憶に残っておりまして、その後少しずつこの作家のもの読んでいくことになります。ちなみに『北風のうしろの国』は貧しい御者の少年ダイヤモンドが、美しい女性の姿をした「北風」と出会い、夜空や嵐の海を旅しながら不思議な世界を体験する、という名作ファンタジー作品です。「ファンタステス」も青年アノドスが、自室の机の引き出しから現れた妖精の女性に導かれ、「妖精の国」へと迷い込み、旅をする物語で、様々な寓意に満ちた異世界遍歴譚であります。

 

こういった作品の目指しているところはトールキンやルイスの例を出すまでもなく、「神話創成」であります。これは三頌亭の個人的な考えですが、このジャンル、「箱庭趣味におけるパノラマ風景の快感」みたいなものに支えられいるんじゃないかとおもうわけですw。ともあれ、こういうことで読みさしにしてあるトールキン「指輪物語」を最後まで読んでみようと最近思うところです。

 

蛇足:ジョージ・マクドナルドはこういったファンタジー作品ばかり書いていたかというとそうではなくて大半は写実的なフィクションが作品リストの多くを占めています。また今までの世評によれば傑作と呼ばれているのは「リリス」(ちくま文庫)です。このジャンルに不案内な方はこちらからどうぞ。

 

 

出版社紹介

「英国近代ファンタジーの真の完成者にして、ウォルター・スコットを継ぐスコットランドの異才マクドナルドの、英仏の宇宙的な神秘論を礎えとした、錬金術的なイメージに溢れる稀有なる夢想の大遍歴譚。」

ファンタステス: 成年男女のための妖精物語 (ちくま文庫:1999 )

北風のうしろの国 (ハヤカワ文庫:1981)

ファンタステス(国書刊行会:1981)

 

長谷川潔「白昼に神を視る」(長谷川 仁/竹本 忠雄/魚津 章夫【編】:1982白水社)

こんばんは、皆様、三頌亭です。最近たまたまとあるところで長谷川潔の版画を見たので紹介しておきます。白水社から出た長谷川潔の画文集「白昼に神を視る」です。最近では書簡やフランス人の評論などを加えた改訂増補版が出ていると思います。「ニレの木」のエピソードが有名ですね。この人の作品を見るとよく思うのが、「印刷では表現は難しい」のかとか「デジタルには置きかえられるのか」といったことです。版画というのがまた面白いです。マスプロの遺伝子を持ちながら「オンリーワン」をめざす不可能性への挑戦がなんとも面白いです。というわけでこの方の作品については現物を見ていただくより仕方がないように思えます。京都国立近代美術館あたりがコレクションは一番充実しているのかもしれません。興味がおありの方はぜひ本を読む距離で作品に接してみてください。

 

出版社紹介

「今世紀最大の銅版画家・長谷川潔の画文集。語録、遺稿、書簡、回想録を集成し、重要作品を精巧な図版によって忠実に再現する。フランスの高名な美術史家による四篇の論文を併せて収録し、神秘の示顕者であるこの巨匠の画業の全容を伝える。愛好家の要望に応えて復刊する普及版。」

長谷川潔「白昼に神を視る」(長谷川 仁/竹本 忠雄/魚津 章夫【編】:1991白水社)

『時 静物画』 昭和44年 銅版(メゾチント) 26.4×35.4cm

 

 

ウイリアム・ホープ・ホジスン『ナイトランド(上下巻)』(月刊ペン社 :1981年、荒俣宏訳)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は読み残しの大作・ホジスン『ナイトランド』でございます。買ってから何十年かぶりにやっと読みましたww。これ読んでなかったんですか~という方もいることでしょう。かなり前にNight Shade Booksというところから出た5巻本のホジスン傑作選を入手して、主だった作品を読むことができました。「ナイトランド」はその時すでに荒俣宏氏の翻訳があって、購入したものが本棚に鎮座ましましておりました。あとがきで荒俣宏氏は「翻訳は苦痛以外のなにものでもなかった」などと書いておられまして、読むのがのびのびになって今回のようなことになってしまっていますw。

さてこの作品一言で言いますと、騎士道・冒険恋愛ロマンス(ちょっとSF風味)であります。考えようによれば古色蒼然、ただの中二病的冒険ロマンスですが、未来におけるナイトランドのディテールと時間軸のねじれ具合がこの作品の肝ではないかと私は思います。ラヴクラフトの言う「コスミック・ホラー」の草分けというわけですね。変な言い方ですが通常の小説的美点を欠いた異常作というのがこの作品の特徴です。皆様いかがでしょうか?

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89

 

ちなみに三頌亭のホジスン作品の一般的なおすすめは『異次元を覗く家』と短編集『海ふかく』(ア-カム・ハウス叢書:国書刊行会)です。ところで妖精文庫のまりの・るうにいさんの表紙が好きだったので載せておきます。

 

原書房・紹介

「百万年後の滅びゆく地球。絶滅の危機を逃れた人類が暮らすピラミッドの外界は、巨大な怪物が闊歩する「ナイトランド」だった。H・P・ラヴクラフトやC・S・ルイスが絶賛した20世紀イギリスを代表する異次元幻想怪奇小説ついに復刊。

 

ウィリアム・ホープ・ホジスン著、荒俣宏訳の『ナイトランド』は、2002年6月に原書房より刊行された傑作幻想長編です。定価3,520円(本体3,200円)、550ページの堂々たるボリュームを誇ります。太陽を失った遥か未来の地球を舞台にした、壮大かつ異様な世界観で知られる伝説的なSF・怪奇小説です。」

ナイトランド上巻:月刊ペン社

ナイトランド下巻:月刊ペン社

ナイトランド:原書房

 

松本清張「両像・森鷗外」(文春文庫:1997)&小金井喜美子「泡沫(みなわ)の歌 :森鷗外と星新一をつなぐひと」 (星マリナ(編集)、ホシヅル文庫:2018)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は森鴎外・関連の本2冊です。三頌亭、鴎外の作品は傑作選みたいなものばかり読んでいて、岩波の全集を読んでいません。このまえやっと文庫になった「椋鳥通信」を読んだですよw。鴎外の評伝についてもしかりです。ということで松本清張「両像・森鷗外」なんですが、これたぶん松本清張の遺作です。単行本になる途中でなくなられたようなのでややまとまりきらないところもあるんですが、非常に面白い評伝になってます。鴎外の作品に『渋江抽斎』(ノンフィクション)という作品があるのですが、これの成立過程が特に面白かったです。『渋江抽斎』の面白さは彼の息子の渋江保が作成して鴎外に預けたドラフト(資料)によるという点を松本清張は指摘しています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%8B%E6%B1%9F%E6%8A%BD%E6%96%8E_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC)#%E5%A4%96%E9%83%A8%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF

 

また余談ですが乃木希典大将(鴎外があこがれていた)の検死報告なんていうものが残っているのかとおどろいてしまいました。ただし、さすがの松本清張も「両像」(軍医という官吏の森林太郎と文人としての森鴎外)について明解には割り切れておりません。清張作品をたくさん読みましたが、三頌亭は松本清張がなぜこのように鴎外という人物に執着するかがよくわからないですw。

 

さて、さらに鴎外関連でもう1冊紹介してみましょう。作家・星新一のおばあさんは歌人・小金井喜美子でして、鴎外の妹です。「泡沫(みなわ)の歌」は星新一の娘さん・星マリナさん編集になる森鴎外&小金井喜美子&星新一・文集です。さしづめ「家族・一族から見た鴎外」といったところです。星新一はエッセイ「藩医と武士」なかであっさり「両像」の謎を説明してくれています。「余は石見人森林太郎として死せんと欲す」といった森鴎外の真意についても平たく説明していて妙に感心してしまいました。星新一の戦時中の愛読書は『渋江抽斎』であったそうです。森鴎外に興味のある方いかがでしょうか?

 

出版社紹介 松本清張「両像・森鷗外」

「官途に精励し、軍医総監まで昇りつめた鴎外。飽くなき創作意欲で文豪の名を恣にする鴎外。二つの像を独自の視座から照射する評伝

鴎外がただ一度訪れた祖父白仙の墓から、敬愛する作家の軌跡を辿る旅は始まった。鴎外はなぜ離婚を機に破門されたはずの西周の評伝を引き受けたのか。晩年の大作史伝「澀江抽斎」「伊沢蘭軒」はどのように創作されたものなのか。研究家の触れるところ少ない謎の部分に、独自の視座から光を当てた遺作評伝。」

 

出版社紹介 小金井喜美子「泡沫(みなわ)の歌 :森鷗外と星新一をつなぐひと」

「森鷗外の妹にして、星新一の祖母。ふたりの作家をつなぐ歌人・小金井喜美子の物語です。

【第一部】 星新一が子守唄がわりに聞きながら眠った小金井喜美子の和歌306首。

喜美子自身が「ただ言歌」と呼ぶ、わかりやすくて古びない和歌は、星新一のショートショートのよう。

【第二部】随筆、日記、手紙、写真等のリレーでつなぐ森鷗外と星新一26項目。

喜美子が子供の頃から兄・鷗外と共有していた文学への思いは、やがて孫の新一へと受け継がれていきました。

 

どちらも日本を代表する作家でありながら、時代もジャンルもちがい、一緒に語られることがない森鷗外と星新一を、子孫の「下から目線」で一緒に語る初の試みです。」

松本清張「両像・森鷗外」

小金井喜美子「泡沫(みなわ)の歌 」

 

エドワード・ルーカス・ホワイト「ルクンドオ」&「セイレーンの歌」(アトリエサード/ナイトランド叢書:2018,2026)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日はE・L・ホワイト(1866~1934)の短編集「ルクンドオ」&「セイレーンの歌」を取り上げてみましょう。この人の作品として日本でもっともよく知られたものは「こびとの呪い(ルクンドオ)」で、谷崎潤一郎の『人面疽(じんめんそ)』と並んで同テーマの代表例ですね。かなり前にオーストラリアの方のやっているオープンライブラリで短編集の「ルクンドオ」を見つけて読んだことがありました。その時感じたことなんですが、ちょっと類別のしようのないスタイルに驚いてしまいました。作家の語る通り、実際の夢をプロットにそのまま取り入れてあるのが、ユニークでなんとも不条理で不思議な感覚を作品に与えています。

 

短編集「ルクンドオ」のほうでは「鼻面」と「夢魔の家」が既訳作品なのでお読みの方もいらっしゃるでしょう。なんとなくわけのわからないヒロィック・ファンタジー「フローキの魔剣」も妙にあとに残る短編でした。いかさま千里眼のお話「千里眼師ヴァーガスの石板」も意外性の結末で面白かったです。また人工楽園に不時着するお話「邪術の島」も何の話かと思いきや・・・少々怖いお話でしたww。

 

2冊目の短編集「セイレーンの歌」は表題作を除いて端正な歴史小説集です。しかし「セイレーンの歌」は悪夢を現実にしたようなパンチのある短編です。気のせいかポーの短編「メエルシュトレエムに呑まれて」を思い出してしまいました。さて、マニアなあなた、いかがでしょうか?w。ところでこの「ナイトランド叢書」のシリーズ、書誌も充実していて大変助かります。ほんとうに「デジタルデータ」の時代になったなあと思う三頌亭です。

 

出版社紹介

『エドワード・ルーカス・ホワイト「ルクンドオ」(アトリエサード/ナイトランド叢書)

目次

ルクンドオ

フローキの魔剣

ピクチャーパズル

鼻面

アルファンデガ通り四十九A

千里眼師ヴァーガスの石板

アーミナ

豚革の銃帯

夢魔の家

邪術の島

あとがき

解説

 

これらの物語は創作ではなく、

わたしが見た“夢”なのです。

見たままに綴られた悪夢、怪夢、残夢……

自らの悪夢を書き綴った比類なき作家ホワイトの

奇想と幻惑の短篇集!

探検家のテントは夜毎にざわめき、

ジグソーパズルは少女の行方を告げ、

魔法の剣は流浪の勇者を呼ぶ――

歴史ロマンの人気作家が夢で逢った、

呪い、怪物、奇妙な犯罪、謎の孤島……

眩暈を誘う幻視に満ちた、十篇の物語。

 

エドワード・ルーカス・ホワイト「セイレーンの歌」(アトリエサード/ナイトランド叢書)

◎目次

まえがき

セイレーンの歌

イアルバース

相応しき者

ドドナの神託

象の耳

束桿──ファスケス──

海面を泳ぐ敵勢

まだらの黒豹

ディスヴォーラ家の窓辺の灯り

松明の据付台

 

古典古代や中世への憧憬、教養に裏打ちされた歴史・幻想・冒険・浪漫

 ──またはE・L・ホワイト『セイレーンの歌』論を、解説にかえて/岡和田晃

E・L・ホワイトの短篇集未収録作品について/健部伸明

カバー・ギャラリー/ヴィジュアル・ギャラリー

 

綿密な歴史考証を礎に、

夢と想像の翼で広がりを与えた

『ルクンドオ』と並ぶ代表作、ついに邦訳!

 

港で出会った耳の聞こえない男。

彼は世界の果てへと赴き、

そこで半人半鳥のごとき

女怪セイレーンを見たという――

 

黄金の古典古代と

中世への憧憬に彩られた

歴史冒険浪漫譚!』

エドワード・ルーカス・ホワイト「ルクンドオ」

エドワード・ルーカス・ホワイト「セイレーンの歌」01

エドワード・ルーカス・ホワイト「セイレーンの歌」02