「血を吸うカメラ」(原題:Peeping Tom : 1960)

こんばんは、皆様、三頌亭です。クラッシックなホラー映画の紹介ばっかりになってますが、三頌亭特選・名画座ということでご勘弁いただきますw。マイケル・パウエル監督「血を吸うカメラ」・・・これも映画雑誌のコラムで見つけて、長い間見たくて仕方がなかった映画でした。VTRになってやっと見ることができた映画です。マイケル・パウエル監督といえば「赤い靴」や「ホフマン物語」は三頌亭の大好きな映画でした。その色彩が素晴らしく、映画特有の興味を存分に満足させてくれるイギリスを代表する映画といってもいいんじゃないかと思ってました。その赫々たるキャリアの最期が何故「血を吸うカメラ」なのか当時は知る由もありませんでした。

 

この映画「血を吸うカメラ」はヒッチコックの「サイコ」とほぼ同じ時期に同じ題材を扱った実験的作品です。ヒッチコックの「サイコ」は興行的にも大成功で評価も素晴らしいものでしたが、パウエルの「血を吸うカメラ」は興行的に大失敗で批評家からも酷評を受けました。それだけならまだしも映画作家としてのパウエル監督の名声を失墜させ、以後のパウエル監督のキャリアを終わらせてしまうという大変不幸な作品となってしまいました。チャールズ・ロートン監督の「狩人の夜」なんかもそうですが世評のためそれ以後映画監督をすることがなかったというのは大変残念なことですね。まあでも最近ではこの映画は評価されていますし、映画的な興味に満ちた傑作だと三頌亭も思っております。

 

ところで余談ですが、サイコな主人公をカールハインツ・ベームはクラシックファンにはおなじみのウィーン・フィルの指揮者・カール・ベームの息子さんです。

 

wiki「血を吸うカメラ」(1960)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%80%E3%82%92%E5%90%B8%E3%81%86%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9

 

「血を吸うカメラ」(1960)字幕なし

https://www.youtube.com/watch?v=oYYygncDjwY

 

作品について

「1960年、イギリス出身の2人の映画監督が、30年にわたる輝かしいキャリアの果てに、それまでの作品とはまったく異なるスタイルの暗鬱な作品を世に問うた。どちらの作品も、期せずして、血腥い犯罪の原因となる性的抑圧をテーマにしていた。犯人の青年はいずれも威圧的な親に育てられ、家族以外に親しい知り合いもなく、内気な若者という見かけの下に深刻な神経症を抱えていた。

 

『サイコ』と『血を吸うカメラ』は、公開後すぐに「スラッシャー映画」というB級ジャンルに分類されたが、今ではむしろサイコホラーとみなされ、その実験的な側面もひろく認知されている。アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』は、ラストに登場する精神科医の説明が観客を安心させたことも功を奏して大ヒットを記録した。一方、マイケル・パウエルの『血を吸うカメラ』は、批評家から変態的な作品と酷評され、興行的にも大失敗に終わった。

 

しかし、ヒッチコックもパウエルも観客にショックを与えるために作品をつくったのではなかった。むしろ、映画における「のぞき」の構造を考え、新しい演出法を創造しようとしたのである。映画の観客は暴力に対してどんな態度をとるだろうか。悪に魅せられた観客は、暴力がやむことを願うとともに、暴力がもっと続けばいいと思うのではないだろうか。独特の魅力をもつ『血を吸うカメラ』(原題『のぞき魔』)は、作品そのものが映画のメタファーとなっている。被写体を撮影するところから始まり、フィルムを上映し、その映像を観客が見るところまで、映画の仕組みのすべてが再現される。つまり、被害者が撮影され、その映像を犯人と私たちが眺めるのだ。

 

殺人犯の若いカメラマンにとって、カメラは第2の眼であり、おのれの欲望を解放し、妄想を実現するために必要な道具であった。こうしてカメラが犯罪の凶器となり、その一方で、スクリーンに映しだされた映像が犯行の動かぬ証拠となった。奇妙なことに、劇中の回想シーンに、マイケル・パウエル自身が息子といっしょに登場する。単なるお遊びか、それとも自分自身の心の闇をぬぐい去ろうとしたのか。その答えは誰にも分からない。いずれにせよ、パウエルは観客と被写体に対して監督の力を誇示したのである。

 

『血を吸うカメラ』は、映画へのオマージュである。映画とは、心に秘めた幻想を具体化する最良の方法である。しかし、それは同時に危険な方法ともなる。パウエルの作品に沿って言えば、愛する者はときに殺人さえも犯すからである。」

 

 

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血を吸うカメラ01

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血を吸うカメラ02

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血を吸うカメラ03

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血を吸うカメラ04

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マイケル・パウエル