山田風太郎「太陽黒点」(1963: 桃源社)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今回は山田風太郎太陽黒点」です。これまた古いお話で恐縮なのですが、山田風太郎がミステリ作家としてデビューしたことを知ったのは現代教養文庫山田風太郎傑作選を読んでからでした。当時、山田風太郎といえば「忍法帖」シリーズが有名で角川文庫には佐伯俊男のカバー絵のものがたくさんあったのを思い出します。山田風太郎のミステリ系の作品は古書店で買ってきたものが多くて桃源社版の「太陽黒点」もそのひとつでした。この作品、以前は取り上げられることも少なかったのですがいまでは「山田風太郎ミステリ作品中の最高傑作」とまで言う人もいらっしゃいますw。読んだ当時は全編に仕掛けられた大きなトリックよりも最後の犯人の独白に感心し、よくできたクライムノベルだと思ったものでした。東京オリンピックの前年を舞台にしたミステリ小説、現在の皆様はいかが感じられることでしょうか?

 

内容紹介:太陽黒点 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)
『昭和30年代後半の東京。才気に満ちた美貌の苦学生・鏑木明は、アルバイト先の屋敷で社長令嬢・多賀恵美子と出会い、偶然にも特権階級への足掛かりを手にする。献身的だが平凡な恋人・容子を捨て、明は金持ち連中への復讐を企て始める。それが全ての悲劇の序章だとは知らず…。“誰カガ罰セラレネバナラヌ”―静かに育まれた狂気が花聞く時、未曾有の結末が訪れる。戦争を経験した著者だからこそ書けた、奇跡のミステリ長編。』

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山田風太郎太陽黒点

 

D・M・ディヴァイン『五番目のコード』(現代教養文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。D・M・ディヴァイン『五番目のコード』ですね。昔読んだので少し再読しました。ディヴァインの作品の中でも人気作だと思います。「ミッシング・リンク」の見せ方が非常に上手な作品でした。ただ、犯人はすこしミステリーを読みなれた方にはわかりやすいものになっています。バランスの取れたお手本のようなミステリー作品です。個人的にはダメ男の新聞記者ビールドの人間ドラマのほうが面白うございましたw。現在この作品は創元推理文庫に収録されています。


出版社紹介
スコットランドの地方都市で、帰宅途中の女性教師が何者かに襲われ、殺されかけた。この件を発端に、街では連続して殺人が起こる。現場に残された棺のカードの意味とは?新聞記者ビールドは、警察から事件への関与を疑われながらも犯人を追う。街を震撼させる謎の絞殺魔の正体と恐るべき真意とは―読者を驚きの真相へと導く、英国本格の巧者ディヴァインの屈指の傑作が甦る。」

 

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D・M・ディヴァイン『五番目のコード』

 

L・P・ ハートリー「ポドロ島」 (KAWADE MYSTERY)

こんばんは、皆様、三頌亭です。最近、ebookで『The Complete Short Stories of L.P. Hartley(Beaufort Books:1986)』というのを買ってみました。L・P・ ハートリーの短編全集です。アンソロジーピースとしてはよく収録される作家なのですが、まとまったものは河出書房新社から出た「ポドロ島」ぐらいでしょう。収録作品は全部で12編でして、その特徴はすべての謎に明確な結末がないということでしょうか?。このあたりアメリカのモダンホラー作品なんかとは全くことなるので、読む人によって好き嫌いが分かれるところでしょう。作品集「ポドロ島」のなかで三頌亭が最も好きなものは「動く棺桶」で、妙なブラックユーモアが突っ走っていておかしい作品です。

余談ですが以前紹介いたしました、『恋を覗く少年』(蕗沢忠枝訳:新鋭海外文学叢書1955年)はジョセフ・ロージーハロルド・ピンターのコンビで映画化されていて邦題を「恋」(原題:The go-between 1971)といいます。映像は素晴らしかった記憶があります。ストーリーはイギリス版「野菊の墓」といったイメージなんですが・・・興味のある方はご覧になってみてください。

出版社紹介&収録作品
ヴェネチア沖の小島にピクニックに出かけた男女が遭遇する不気味な出来事を描いた表題作、小説家が謎の読者からの手紙に脅かされる「W・S」、奇怪な機械仕掛けの棺が登場、ブラックユーモアに満ちた「動く棺桶」他。心の闇にひそむ妄執を精妙な筆致で描く異色恐怖小説集。

ハートリー,レズリー・ポールズ
1895‐1972。イギリスの作家。オックスフォード大学を卒業、二十代で評論家・短篇作家として出発。第二次大戦後、自伝的長篇三部作『小海老とイソギンチャク』『第六天国』『ユースタスとヒルダ』(1944‐47)で注目を集める。『恋を覗く少年』(1953)は「完璧な小説」と批評家の絶賛を浴びてベストセラーとなり、ジョゼフ・ロージー監督、ハロルド・ピンター脚本で映画化された(『恋』)。その怪奇短篇はしばしば「英語で書かれた最も洗練された幽霊譚」と評される。「ポドロ島」「W・S」「豪州からの客」などは怪奇小説アンソロジーの定番的名作

『ポドロ島』
『動く棺桶』
『足から先に』
『持ち主の交代』
『思いつき』
『島』
『夜の怪』
『毒壜』
『合図』
『W・S』
『パンパス草の茂み』
『愛し合う部屋』

 

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ハートリー「ポドロ島」 (KAWADE MYSTERY)

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The Travelling Grave and Other Stories(Arkham House:1948)

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The go-between 1971

 

D・M・ディヴァイン『ロイストン事件』(現代教養文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日はD・M・ディヴァイン『ロイストン事件』です。かなり前に読んだので少し再読いたしました。ディヴァインの長編・第3作品です。この作品、弁護士一家のお話なのですが、まるで人形劇を見るが如くでありまして、それぞれにわかりやすいキャラクタを配し、非常に無駄なくストーリーを進行させているところがすごいです。肝心のミスダイレクションはほかのディヴァイン作品にに比べて控えめですが、見せ方は素晴らしいですw。さて『ロイストン事件』って何だったんだ?・・・というツッコミがあるとは思いますが、読んだ後ではどうでもよくなるのでご心配なくw。ところでテキストのほうが現在絶版なので、創元推理文庫に入るまでもう少しだけお待ちください。

出版社紹介
「至急助けが要る。きわめて重大なことがわかった。おまえの義弟は…」4年前に勘当されたマークが実家で見た手紙の下書きは何を意味しているのか。父の死体が新聞社内で発見された。父は勘当の元になったロイストン事件の再調査をしていたようだ。それは教師をめぐるスキャンダルだったが、弁護士だったマークは父の意に逆らい、義弟を偽証と証拠隠滅で告発したのだった。

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The Royston Affair01

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The Royston Affair02




中町信「心の旅路」連続殺人事件 (徳間文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。これも、昔読んだ作品からご紹介いたします。まああいろいろあって40年も前のお話で恐縮ですw。中町信の長編作品は50以上あるのですが、三頌亭が目を通しているのは60%くらいでしょうか?。その中でもっとも印象に残っているのが『「心の旅路」連続殺人事件』です。「心の旅路」というくらいですから記憶喪失のお話なのですが、解説の中島河太郎先生も書いている通り、そのサスペンスフルな展開は中町信の作品の中では特筆すべきと思ってきました。専業作家になるまでの10数年間、第一長編「新人賞殺人事件(模倣の殺意)」から短編集「Sの悲劇」までの作品はどれも丁寧に書かれていて素晴らしいです。下記にwikiからの作品リストをお示しいたします。

中町信・作品リスト
新人賞殺人事件(1973年6月 双葉社
【改題】新人文学賞殺人事件(1987年2月 徳間文庫)
【改題】模倣の殺意(2004年8月 創元推理文庫

殺された女(1974年2月 弘済出版社)
【改題】「心の旅路」連続殺人事件(1987年8月 徳間文庫)

殺戮の証明(1978年2月 日本文華社)
【改題】女性編集者殺人事件(1987年9月 勁文社ノベルス / 1989年7月 ケイブンシャ文庫)

自動車教習所殺人事件(1980年2月 徳間ノベルス / 1988年2月 徳間文庫)
【改題】追憶の殺意(2013年8月 創元推理文庫

高校野球殺人事件(1980年12月 徳間ノベルス / 1989年2月 徳間文庫)
【改題】空白の殺意(2006年2月 創元推理文庫

散歩する死者(1982年6月 徳間ノベルス / 1989年10月 徳間文庫)
【改題】天啓の殺意(2005年4月 創元推理文庫

田沢湖殺人事件(1983年3月 徳間ノベルス / 1990年7月 徳間文庫)

奥只見温泉郷殺人事件(1985年11月 徳間ノベルス / 1991年6月 徳間文庫)

十和田湖殺人事件(1986年5月 徳間ノベルス / 1992年3月 徳間文庫)

Sの悲劇(1987年9月 青樹社
収録作品:Sの悲劇 / 死の時刻表 / 裸の密室 / カブトムシは殺される / サンチョパンサは笑う / 312号室の女 / 動く密室

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「心の旅路」連続殺人事件01

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「心の旅路」連続殺人事件02

 

アニメ「ダーウィンズゲーム」

こんばんは、皆様、三頌亭です。別冊少年チャンピオン連載の「ダーウィンズゲーム」のアニメ化作品です。現在、放送中ですね。残念ながらマンガ連載のほうはあんまり読んでおりません。ですが、まあヒット作ですので、なかなか面白く作ってあります。全体としては「ソードアート・オンライン」風の設定なのですが、異能バトル(対戦形式)の部分をより前面に出したストーリーになってます。ちょっとおもしろいなと三頌亭が思うキャラクターはカシワギ・ レインという女性のキャラで、全ての動きを予想する異能『ラプラス(世界関数)』の使い手ですw。

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ダーウィンズゲーム」01

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ダーウィンズゲーム」02

 

クレイグ・トーマス「ファイアフォックス・ダウン」

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日は以前紹介したクレイグ・トーマス「ファイアフォックス」の続編、「ファイアフォックス・ダウン」です。三頌亭は航空冒険小説の雄編だと思ってまいりました。続編というのは難しいものでたいていの場合は正編より落ちるというのが常なのでありますが、「ファイアフォックス・ダウン」は例外中の例外、続編のほうが面白うございます。作者・クレイグ・トーマスの小説家の意地というのが感じられる傑作となっております。イギリスお得意のスパイアクションの変種なのですが、ル・カレなどと違って「しんねりむっつり」したところがないですw。

書評(東京創元社の方)
http://honyakumystery.jp/1447715450
なかなか良くて面白いです!

出版社紹介
ファイアフォックス (ハヤカワ文庫NV)
「最高速度マッハ5以上、レーダーを無力化し、ミサイルを脳波で操るミグ31ファイアフォックス。ソ連が開発したこの最新鋭戦闘機は、西側に計り知れぬ脅威を与えた。かくてCIAとSISは、機の秘密を奪うべく大胆不敵な作戦を立案する。厳重な警戒網を突破して、ファイアフォックスを盗み出そうというのだ。任務に赴くのは、傑出した操縦技術を持つ米空軍のパイロット、ミッチェル・ガント。輸出業者に変装した彼は、単身モスクワへ潜入するが…!驚異の戦闘機をめぐって展開する白熱の攻防戦―サスペンス溢れる冒険小説の雄篇。」

ファイアフォックス・ダウン〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
英米情報部の密命を帯びた米空軍パイロットのミッチェル・ガントは、ソ連が開発した最新鋭戦闘機ファイアフォックスの強奪に成功した。だが、追跡機との空中戦で被弾したファイアフォックスは燃料漏れを起こし、中立国フィンランドの凍結湖に不時着した。消えた最新鋭戦闘機を手中に収めるべく、必死の捜索活動を展開する英米ソ連。一方、ガントはソ連軍に捕えられ、尋問のためにモスクワのKGB研究所へと送られた。」

ファイアフォックス・ダウン〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
KGBの研究所から脱走したガントは、CIAの女性工作員アンナに窮地を救われた。彼女は、ガント逮捕の指揮をとるプリャービン大佐の恋人だった。ガントとアンナは陸路でフィンランドとの国境へ向かうが、これを察知したプリャービンは単身で二人の後を追う。一方、英米よりも一歩遅れて最新鋭戦闘機の所在を突き止めたソ連側は、奪還部隊をフィンランドへ侵入させた…。傑作航空冒険小説『ファイアフォックス』の続篇。」

 

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クレイグ・トーマス「ファイアフォックス・ダウン」

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クレイグ・トーマス「ファイアフォックス」