早坂吝「双蛇密室」(講談社ノベルス)

こんばんは、皆様、三頌亭です。引き続き早坂吝さんの「双蛇密室」です。この作品はなんといいますか・・・ww、小栗虫太郎を読みやすくして、コミカルにしたもの・・・とでもいえばいいのでしょうか?。ちょっとアレな生物系の知識は別として・・、そんなことはどうでもよろしいです。スーパーロジック炸裂度合いがすばらしいです。相変わらず謎の説明についてはほんとうに要領がよろしいです。わたしのような、既述の脳内具体化が下手な人にはうれしい限りです。個人的にはアナコンダのくだりが爆笑ものでした。ちょっとだけ昔読んだ鷲尾三郎の「鬼胎」を思い浮かべてしまいました。しかし惜しい・・・漫画原作としては最高なんですが、掲載紙が限られてしまいますね。

 

出版社紹介

『「援交探偵」上木らいちの「お客様」藍川刑事は「二匹の蛇」の夢を物心付いた時から見続けていた。一歳の頃、自宅で二匹の蛇に襲われたのが由来のようだと藍川が話したところ、らいちに矛盾点を指摘される。両親が何かを隠している? 意を決して実家に向かった藍川は、両親から蛇にまつわる二つの密室事件を告白された。それが「蛇の夢」へと繋がるのか。らいちも怯む(!?)驚天動地の真相とは?』

 

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早坂吝「双蛇密室」

 

早坂吝「○○○○○○○○殺人事件」(2014年 講談社ノベルス)

こんばんは、皆様、三頌亭です。これは以前読んで記事にしたんですが、アップしなかったもののひとつです(寸評ですw)。なんとなく選んで読んだものなのですが、これが結構面白かったという作品です。突飛な設定の割には要領よく簡潔に説明しているところがおかしいですw。読みだして途中の挿話で「出血がどうの・・・」というところまでいって、「本気でそんなネタ使うの?ww」と笑ってしまいました。この作品なんといったらいいでしょうか?。城平京さんの「虚構推理」あたりが近親種でしょうか?。せっかくの作品なのにコミカライズできないのが残念ですww(地の文章とストーリー作りは非常に上手な人ではないかと感じました)。因みに著者のツイッターからお借りした早坂吝作品の読み方フローチャートをお示しいたします。

 

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早坂吝「○○○○○○○○殺人事件」

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早坂吝作品推奨フローチャート

 

「殺さずにはいられない-小泉喜美子傑作短篇集」 (中公文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。引き続き日下三蔵氏編集の小泉喜美子傑作短篇集「殺さずにはいられない」です。この本はボーナストラック読みたさに買ったものですw。「客にはやさしく」以下6つのショート・ショートですね。その他の収録作品は青樹社の新書版・同名タイトルからの収録です。どれもなかなか面白いのですが、私の記憶に残っているのは「髪」「殺人者と踊れば」「殺さずにはいられない」の3作品です。過去記事ですが下記に寸評があります。

 

小泉喜美子「またたかない星(スター)」

http://kms130.livedoor.blog/archives/20359917.html

記事中の「殺さずにはいられない」の男女を入れ替えた別バージョンというのは「コメディアン」(新評社)収録の「ヒーロー」で和製ハードボイルド作品になっています。「殺人者と踊れば」などでもそうなのですがこのひとのハードボイルド風の作品はどことなく落語の世話物っぽい雰囲気があるのが愛嬌ですw。

 

 

出版社紹介

「推理作家が親友に古今東西の「殺し方」を話したその晩、人が殺された。驚きの方法で…(「冷たいのがお好き」)。昔の恋人を消す計画を練っていた男が落ちた陥穽(「殺さずにはいられない」)。幻のショートショートを含む傑作短篇集第二弾。著者選「ミステリーひねくれベスト10」も収録する。〈巻末エッセイ〉山崎まどか〈解説〉日下三蔵

収録作品

「尾行報告書」

「冷たいのがお好き」

「血筋」

「犯人のお気に入り」

子供の情景

「突然、氷のごとく」

「殺人者と踊れば」

「髪」

「被告は無罪」

「殺さずにはいられない」

「ミステリーひねくれベスト10」(エッセイ)

「客にはやさしく」

「投書」

「ボーナスを倍にする方法」

「ご案内しましょう」

「ありのまま」

「プロの心得教えます」

 

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殺さずにはいられない-小泉喜美子傑作短篇集

 

『痛みかたみ妬み - 小泉喜美子傑作短篇集』 (中公文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。これも少し前に読んだ本です。小泉喜美子の本を読んだのは前のブログでも紹介したのですがずっと昔のことです。ただ読んでなかった単行本がいくつかありまして気にかかってました。そのうちのひとつがこの作品集です。本格ミステリが好きな方にはそれほど面白くないかもしれませんが、三頌亭は好きでよく読んだものでした。さてこの作品集ですが、三頌亭は「影とのあいびき」が面白かったです。ミステリ作品というわけではありませんが、夢をみるような不思議さと主人公のマジシャンめいたキャラクターが素晴らしいです。皆様はいかがでしょうか?

 

ご参考までに最近復刻された小泉喜美子作品のリストをお示しいたします。

『血の季節』[2016年8月:宝島社文庫

『殺人はお好き?』[2017年2月:宝島社文庫

『痛みかたみ妬み』[2017年3月:中公文庫]

『殺さずにはいられない』[2017年8月:中公文庫]

『月下の蘭/殺人はちょっと面倒』[日下三蔵編、2018年2月:創元推理文庫

『女は帯も謎もとく』[2018年6月:光文社文庫

『殺人は女の仕事』[2019年1月:光文社文庫

『ミステリー作家の休日』[2019年9月:光文社文庫

『ミステリー作家は二度死ぬ』[2020年5月:光文社文庫

 

『痛みかたみ妬み - 小泉喜美子傑作短篇集』収録作品

『痛みかたみ恨み』(1890年)より、 

 「痛み」

 「かたみ」

 「妬み」

 「セラフィーヌの場合は」

 「切り裂きジャックがやってくる」

 「影とのあいびき」

『またたかない星』(1979年)より「またたかない星」、「兄は復讐する」。

 単行本未収録の二編として「オレンジ色のアリバイ」、「ヘア・スタイル殺人事件」

出版社紹介

「先生、ごめんなさい……。痛みと後悔に苦しむ少女が知らぬ真実(「痛み」)。裕福な人妻はなぜホテルで突然命を絶ったのか?(「かたみ」)。天才舞踊家をずっと見つめてきた女の心裏は(「妬み」)。息詰まる駆け引き、鮮やかなどんでん返し。人生の裏も表も知る大人のためのミステリー。入手困難・幻の短篇集の増補復刊。〈解説〉日下三蔵

 

 

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痛みかたみ妬み - 小泉喜美子傑作短篇集

 

石森章太郎「幽霊船」

こんばんは、皆様、三頌亭です。これも特にという話題ではないのですが、思い出したので書いておきましょう。石森章太郎「幽霊船」です。最近、復刊ドットコムからいろいろ当時の資料を盛り込んだ「完全版」というのが出ていて少し見てみたいと思っている三頌亭ですw。この作品初めて読んだのはサンコミックの傑作選だったと思いますが、同じ短編でも「龍神沼」のように作者がしてやったりの作品ではないにせよ、石森章太郎のよくできた傑作短編だったと最近になってもよく思います。実を言いますと漫画原作を読んだのは劇場用アニメ「空飛ぶゆうれい船」を2度ほど見た後でした。公開時に1度、テレビで2度目です。こちらも少し尺の短いアニメでしたが、非常によくできた作品です。はじめはホラー、あとはSFというごちゃまぜのアニメなんですがなんとも楽しい映画です。最近になってDVDで見直したのですが、色が格段にきれいになっていてうれしかったです。余談ですがそれにしても「ボアジュース」ってインパクトありますよねww、因みに原作にはございませんが・・・。

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サンコミック版・石森章太郎「幽霊船」

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「空飛ぶゆうれい船」ポスター

 

H・P・ラヴクラフト「インスマスの影&狂気の山脈にて :クトゥルー神話傑作選」南條竹則/編訳 (新潮文庫)

こんばんは、皆様、三頌亭です。特にという話題ではないのですが新潮文庫からラヴクラフトの傑作選が出てます。南條さんの翻訳ですね。傑作選としては決定版かなと思いまして、ここに紹介いたします。代表作の殆どが入ってます。入っていないのは「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」ぐらいでしょうか?。まあこれでお気に召した方は創元文庫版の全集のほうにあたっていただければと思います。ところで翻訳のほうはというとなかなか快調ですw。これは昔、英文で読んだことがあるのでちょっとぐらい言ってもいいでしょう。翻訳が古臭いという方もいらっしゃるようですが、大体、大正から昭和の初めくらいの人ですので古臭くて当たり前だと思いますw。さて、実はラヴクラフトという人は筆まめなひとで膨大な量の書簡が残されています。アーカムハウス版の全5巻の書簡集どなたか翻訳してくれませんかねえ(版権がややこしいのでしょうか?)。こっそりpdfで3巻分は持ってるんですが、なかなか面白いです。

 

インスマスの影」収録作品

異次元の色彩

ダンウィッチの怪

クトゥルーの呼び声

ニャルラトホテプ

闇にささやくもの

暗闇の出没者

インスマスの影

ラヴクラフトは不遇のままその生涯を閉じた。だが、彼の創造したクトゥルー神話は没後高く評価され、時代を越えて世界の読者を虜にしている――。頽廃した港町インスマスを訪れた私は、魚類を思わせる人々の容貌の恐るべき秘密を知る(表題作)。漂流船で唯一生き残った男が握りしめていた奇怪な石像とは(「クトゥルーの呼び声」)。英文学者にして小説家、南條竹則が選び抜いた、七篇の傑作小説。』

 

「狂気の山脈にて」収録作品

ランドルフ・カーターの陳述

ピックマンのモデル

エーリッヒ・ツァンの音楽

猟犬

ダゴン

祝祭

狂気の山脈にて

時間からの影

『ダイヤー率いるミスカトニック大学探検隊は、南極大陸に足を踏み入れた。彼らは禁断の書『ネクロノミコン』の記述と重なる、奇怪きわまる化石を発見する(表題作)。一九〇八年五月十四日、ピーズリー教授の身に異変が起きた。“大いなる種族”との精神の交換がなされたのだ(「時間からの影」)。闇の巨匠ラヴクラフトの神話群より傑作八篇を精選し、新たに訳出。あなたに、眠れぬ夜を約束する。』

 

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インスマスの影

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狂気の山脈にて

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1936年2月「狂気の山脈にて」掲載号 001

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1936年2月「狂気の山脈にて」掲載号 002

 

マイケル・ルイス「フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち」

こんばんは、皆様、三頌亭です。今日はマイケル・ルイス「フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち」です。文庫本になりましたのでこの機会にと思いまして・・w。以前読んだ『ライアーズ・ポーカー』と『世紀の空売り(The Big Short)』が面白かったので一緒に読んだ本です。内容はというと『HFT(high-frequency trading) : 高頻度取引』に群がる人たちを描いたノンフィクションです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%A0%BB%E5%BA%A6%E5%8F%96%E5%BC%95

HFTとは何かと簡単に言うと解説にも書いてありますが「後出しジャンケン」を行うことで利益を上げる取引のことです。ただこれを1ナノ・セカントクラスの速さでやられては普通の人は気が付きませんよね。HFTを追い詰めていく日系トレーダーのくだりはまるで推理小説を読むような快感があります。映画「ハミングバード・プロジェクト」のほうは光ケーブル敷設の苦労話的なムードがあって少し別物になってます。まあ、御興味が向きましたらいかがでしょうか?。

 

出版社紹介

『証券市場の民主化によってニューヨーク証券取引所Nasdaq以外の証券取引所が乱立するようになった2009年ぐらいから、ディーラーたちは不思議な現象に悩まされる。コンピュータスクリーンが映し出す各証券市場の売値と買値で取引しようとすると、ふっと売り物や買い物が消えてしまうのだ。その値が消えて、買う場合だったらば、必ずそれより高い値で、売る場合だったらばそれより低い値で取引が成立してしまうのだ。二軍投資銀行に勤めるブラッド・カツヤマは、なぜか株を買おうとすると値段が逃げ水のようにあがってしまう事に気づく。彼はドンキホーテのように、単身調査に乗り出す。するとそこには、私たちの注文を10億分の1秒の差で先回りしていく超高速取引業者「フラッシュ・ボーイズ」の姿があったのだ。巨大システムの詐欺と実態を暴いた傑作ノンフィクション‼』

 

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フラッシュ・ボーイズ01

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フラッシュ・ボーイズ02

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フラッシュ・ボーイズ03